
土地の相続は複雑な法律や専門的な手続きが絡むため、どこに相談すればよいのか、費用はどのくらいかかるのかなど、疑問が尽きないものです。
対応を誤るとトラブルに発展したり、余計な費用が発生したりする可能性があります。
適切な手続きや必要書類、費用について知らないまま進めると、不動産の名義変更が滞り、売却や活用ができない問題が生じるかもしれません。
この記事では、土地を相続する際の手続きの流れ、必要な書類と費用、主な分割方法について詳しく解説します。
土地を相続する際の手続きの流れ
土地を相続する際の手続きの流れは、以下の通りです。
- 相続する不動産を確認
- 遺書の有無を確認
- 法定相続人の確定
- 遺産分割協議の実施
- 相続登記(名義変更)
- 相続税の申告および納付
故人の遺志を尊重し、相続人全員が納得できる形でスムーズに手続きを進めるには、全体の流れを把握し、ひとつずつ着実に実行する意識を持ちましょう。
ここでは、土地を相続する際の手続きの流れを詳しく解説します。
相続する不動産を確認
土地を相続する初めのステップは、被相続人が所有していた不動産(土地や建物)の具体的な確認です。
不動産の所在地や種類、面積などを把握しましょう。例えば、被相続人の自宅に登記済権利証や登記識別情報通知があれば、そこから情報が得られます。
また、市区町村役場で固定資産評価証明書や名寄帳(所有不動産の一覧)を取得すると、被相続人名義のすべての不動産を確認できます。
遺書の有無を確認
相続する不動産が判明したら、被相続人が遺言書を遺しているかどうかを確認します。
遺言書は被相続人の意思が明確に示されているため、遺産分割に際して最優先されます。自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言など、いくつかの種類があるため、自宅や貸金庫、公証役場などで探してみましょう。
自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
不動産の分割方法や手続きの流れは、遺言書の有無によって変わってきます。
法定相続人の確定
遺言書の有無を確認した後は、相続人を正確に確定しなければいけません。
法定相続人は、被相続人の戸籍謄本を出生から死亡まで全て取得すると、正確に相続人を確認できます。これにより、相続の権利を持つ人が誰なのかを明確にできるでしょう。
相続人が1人でも欠けていると、遺産分割協議が無効になったり、不動産の名義変更ができなかったりする可能性があります。したがって、法定相続人の確定は重要です。
なお、正確な戸籍の調査には時間がかかる場合があるため、余裕を持って調査してください。
遺産分割協議の実施
有効な遺言書がない、または遺言書に記載のない不動産がある場合は、相続人全員で遺産分割協議を実施し、不動産を誰がどのように相続するかを話し合って決定します。
不動産は現金のように簡単に分割できないため、誰が単独で取得・共有するのか、売却して代金を分けるのかなど、さまざまな方法が検討されるはずです。
話し合いがまとまったら、トラブルの発生を防ぐために、内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印で押印してください。
相続登記(名義変更)
遺産分割協議がまとまり、誰が不動産を相続するかが決まったら、相続登記(名義変更)の手続きを行います。
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から新しい所有者である相続人へ、変更するための手続きです。申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続人は所有権の取得を知ってから3年以内に申請しなければいけません。
登記を完了すると、不動産の所有権が公に証明され、売却や担保設定などが可能になります。
相続税の申告および納付
土地を含む相続財産の総額が、相続税の基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納付が必要です。
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
土地の評価方法は複雑なため、正確な評価には専門知識が求められます。
相続税の申告は税務署に対して行い、納税は金融機関を通じて行います。申告を怠ったり、誤りがあると、加算税や延滞税を課される可能性があるため注意しましょう。
土地の相続登記に必要な書類と費用
土地の相続登記(不動産の名義変更)は、相続のなかでも特に重要な手続きです。
さまざまな書類の準備と費用が必要になるほか、不備があると手続きが進みません。そのため、事前にしっかりと確認し、漏れなく揃える必要があります。
ここでは、土地の相続登記に必要な書類と費用をそれぞれ詳しく解説します。
主な必要書類
土地の相続登記には、複数の書類が必要です。
まずは被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、住民票の除票です。これにより、被相続人の死亡と、すべての相続人を特定します。
次に、相続人全員の戸籍謄本と、不動産を取得する相続人の住民票を用意しましょう。遺言書がある場合は遺言書、遺言書がない場合は遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要です。
さらに、相続する不動産の固定資産評価証明書、不動産の所在地の公図や測量図(必要に応じて)も準備します。
相続登記をする際はこれらの書類を漏れなく揃え、不備がないか確認してください。
相続登記にかかる費用
土地の相続登記は登録免許税と、司法書士に依頼する場合に限り司法書士への報酬がかかります。
登録免許税は、固定資産評価額の0.4%が基本です。例えば、固定資産評価額が2,000万円の土地を相続する場合、8万円の登録免許税が発生します。
司法書士への報酬は、依頼する事務所や案件の複雑さによって異なります。しかし、一般的には5万円〜15万円ほどが相場です。
加えて、戸籍謄本などの書類取得費用や郵送費などの実費も発生します。これらの費用を合算し、相続登記にかかる総額を見積もっておきましょう。
土地の遺産分割方法
土地は現金や預貯金とは異なり、物理的に分割するのが難しい財産です。
そのため、相続人全員が納得できる形で土地を分割するには、状況に合った方法を選ぶ必要があります。
- ・現物分割
- ・代償分割
- ・換価分割
- ・共有分割
それぞれメリットとデメリットがあり、相続人同士の状況や土地の利用目的などを考慮して慎重に選択しなければいけません。
ここでは、土地の遺産分割方法をそれぞれ詳しく解説します。
現物分割
現物分割は、土地をそのものの形で分割する方法です。
例えば、広大な土地を複数の筆に分筆登記し、それぞれの相続人が一筆ずつ取得します。建物付きの土地であれば、建物は長男が、隣接する更地は次男が取得するといった形でも分割が可能です。
現物分割は、相続人それぞれが土地を実際に利用したい場合に適しています。
しかし、土地の形状や利用状況によっては物理的な分筆が難しくなるほか、分筆によって土地の価値が下がる可能性があります。
代償分割
代償分割は土地を特定の相続人が単独で取得する代わりに、相続人が他の相続人に対して、自己の財産(現金など)から代償金を支払う方法です。
例えば、実家と土地を長男が相続する代わりに、長男が他の相続人に土地の評価額に応じた金銭を支払う形が考えられます。
代償分割は、特定の相続人が土地を引き継ぎたい、あるいは土地を売却せずに残したい場合に有効です。
ただし、代償金を支払う側の相続人に十分な資力があることと、代償金の金額を巡ってトラブルにならないよう相続人全員の合意が必要です。
換価分割
換価分割は相続した土地を売却し、売却によって得られた金銭を相続人全員で分け合う方法です。
例えば、相続した土地を第三者に売却し、売却代金を法定相続分や遺産分割協議で定めた割合で分割する形をとります。
換価分割は、土地を公平に分割したい、あるいは相続人全員が現金を必要としている場合に適しているでしょう。
しかし、土地の売却には時間と手間がかかるため、市場の状況によっては希望通りの価格で売却できなかったり、売却益に対して譲渡所得税が課せられる可能性があります。
共有分割
共有分割は土地を分けるのではなく、複数の相続人が共同で所有し続ける方法です。
例えば、相続した土地を兄弟姉妹がそれぞれ共有名義で登記する形が考えられます。
共有分割は、現時点では土地の利用方法が決まっていない、あるいは将来的に売却などを検討している場合に選択される場合があります。
しかし、土地が共有名義になると、売却や建築などの後の利用や処分に共有者全員の同意が必要です。したがって、意見が分かれた際にトラブルに発展するリスクがあるため、慎重に検討しなければいけません。
土地を相続する際の注意点
土地を相続する際は、以下の注意点を把握しておきましょう。
- ・相続人は所有権の取得を知ってから3年以内の相続登記が義務
- ・固定資産税の支払い義務
- ・共有名義のリスク
- ・相続放棄や限定承認は3ヶ月以内の手続きが必要
これらを把握しておくと、思わぬトラブルや不利益を回避できます。特に、相続登記の義務化や固定資産税の支払い義務、共有名義のリスクなどは、押さえておくべきです。
ここでは、土地を相続する際の注意点をそれぞれ詳しく解説します。
相続人は所有権の取得を知ってから3年以内の相続登記が義務
土地を相続した場合、相続人はその所有権の取得を知ってから3年以内に相続登記(名義変更)を行うことが法律で義務付けられました。
これは、2024年4月1日から施行された改正民法によるものです。
正当な理由がないにもかかわらず登記を怠ると、過料が科される可能性があります。
固定資産税の支払い義務
土地を相続した場合、登記が完了していなくても土地の所有者になった時点で、固定資産税の支払い義務が発生します。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税され、5月ごろに納税通知書が届きます。相続登記が遅れると、税金に関する通知が適切に届かず、滞納につながる可能性があります。
未登記のまま放置された土地は課税対象者が不明確になるほか、行政側も管理が困難になるため、早めの登記と税金の把握が必要です。
共有名義のリスク
土地を複数の相続人で共有名義で相続する場合、いくつかのリスクが伴います。
例えば、共有名義の土地は、売却や大規模なリフォームなどを行う際に共有者全員の同意が必要です。1人でも反対する人がいれば、手続きを進められません。
また、共有者の誰かに相続が発生した場合、さらに共有者が増えて権利関係が複雑化する可能性があります。
将来的なトラブルを避けるためにも、共有分割を選択する際は慎重に検討し、将来的な見通しを立てておく必要があるでしょう。
相続放棄や限定承認は3ヶ月以内の手続きが必要
相続した土地に多額の借金など、マイナスの財産が含まれている場合、相続放棄や限定承認を検討する必要があるかもしれません。
相続放棄とは、被相続人のすべての財産(プラスもマイナスも)を相続しないことです。限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することを指します。
これらの手続きは、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければいけません。期間を過ぎると、原則としてすべての財産を相続することになるため注意が必要です。
まとめ
土地を相続する際の手続きは、相続する不動産の確認から始まり、遺言書の有無の確認、法定相続人の確定、遺産分割協議の実施へと進みます。
協議がまとまったら相続登記(名義変更)を行い、最後に相続税の申告および納付が必要です。
費用は登録免許税(固定資産評価額の0.4%)と、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。
また、土地の遺産分割方法は、土地をそのまま分ける現物分割、金銭に換えてから分ける換価分割、特定の相続人が土地を取得し他の相続人に代償金を支払う代償分割、共同で所有し続ける共有分割の4つがあります。
相続登記の義務化や固定資産税の支払い義務、共有名義の将来的なリスクなどにも十分に注意してください。
ただし、土地相続の手続きは複雑かつ専門知識が必要なため、円滑な進行を実現させるためにも弁護士への依頼を検討しましょう。
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