
交通事故にあった場合に、「慰謝料はどれくらいもらえる?」「慰謝料の算定方法は?」など疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
慰謝料の額はケガの程度や後遺障害の有無、家族構成などによって大きく異なります。また、保険会社が提示する金額は必ずしも適正とは限らず、弁護士に相談することによって増額となるケースも少なくありません。
交通事故後に慰謝料を請求する際には、適切な金額や相場を把握しておくことが大切です。
この記事では、交通事故の慰謝料について、相場や計算方法、請求時のポイントまでわかりやすく紹介します。
交通事故の慰謝料とは
交通事故の慰謝料とは、事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対する金銭的な保障のことです。
ここでは、交通事故の慰謝料について詳しく解説します。
示談金との違い
示談金は損害全体への賠償金であるのに対し、慰謝料は精神的苦痛に対する補償金という違いがあります。
慰謝料は交通事故の被害で生じた精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。一方、示談金は治療費、休業損害など事故で発生したさまざまな損害項目すべてを合計したもので、その中に慰謝料も含まれます。
つまり、示談金は「慰謝料+実費損害」となり、慰謝料の金額のみ請求する場合もありますが、他の費用とまとめて支払いの話し合いが進むことが多いです。
交通事故で慰謝料請求ができる理由
交通事故で慰謝料請求ができる理由は、民法上の不法行為責任により、慰謝料請求権が認められているためです。
交通事故被害者は、ケガや後遺障害、死亡などによって身体的・精神的な苦痛を受けることになります。この精神的損害は法律上も保護されており、交通事故によって被害者が受けた苦痛や不安、恐怖に対し、加害者や保険会社は金銭で賠償する義務を負います。
入通院した場合、後遺障害が残った場合、被害者が死亡した場合など、状況に応じて慰謝料の請求が可能です。
交通事故の慰謝料を支払う義務がある人
交通事故の慰謝料を支払う義務があるのは、基本的に加害者本人であり、多くは加害者が契約する保険会社が実際に支払います。
交通事故の慰謝料は、交通事故の被害で生じた精神的苦痛に対して支払われる賠償金加害者の責任で生じた損害であるため、まずは加害者本人が支払い義務を持ちます。しかし、日本ではほとんどのドライバーが自賠責保険や任意保険に加入しているため、被害者は主に保険会社へ慰謝料を請求するのが一般的です。
重度のケガや死亡事故などの場合は、自賠責保険でカバーできない損害を、任意保険や加害者本人が自己負担しなければなりません。
交通事故の慰謝料の相場
交通事故の慰謝料の相場は、弁護士基準で以下の通りです。
- ・入通院慰謝料:約28万~116万円
- ・後遺障害慰謝料:約110万~2,800万円
- ・死亡慰謝料:約2,000万~2,800万円
これらの慰謝料相場は弁護士が交渉するときの金額です。
実際には相手の任意保険会社が異なる計算方法を用いて、さらに低い金額で示談交渉を進めてくることが多いため、慰謝料の正しい相場を把握しておく必要があります。
慰謝料の時効
交通事故の慰謝料請求権の時効は原則5年で、これを過ぎると請求できなくなるため注意が必要です。
もともと、交通事故の慰謝料請求権の時効は損害および加害者を知った時から3年でした。
令和2年4月の民法改正によって、人身事故による慰謝料などの損害賠償請求権の時効期限は「損害および加害者を知った時」から5年となっています。
つまり、事故によるケガや後遺障害、死亡が発生した場合、被害者や遺族は事故発生日や症状固定日などを起点に5年以内に請求しなければなりません。ひき逃げや加害者が不明の場合は、事故発生日から20年間は請求できます。
また、物損事故の場合は時効が3年となるため注意が必要です。
交通事故の慰謝料の種類
交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があり、それぞれ計算方法や相場が異なります。
ここでは、交通事故の慰謝料の種類を紹介します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、ケガをして通院や入院した場合の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
この慰謝料は、被害者が交通事故で負傷し、通院や入院による治療を受けた場合に認められます。金額は入通院期間の長さや治療内容によって決まり、期間が長いほど、入院が多いほど高額になるのが一般的です。
基本的には後遺障害が残らなくても、治療を受けた事実やその期間によって算出されますが、病院に行かなかった場合は原則認められません。
また、早期に通院を打ち切った場合は金額が減る可能性があるため、症状が残っている場合は適切に治療を続けることが大切です。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残った場合に、その等級に応じて精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
交通事故の治療後も完治せず、事故によって体や精神に後遺障害が残った場合、被害者には等級に応じて慰謝料が支払われます。等級は1級から14級まで分類されており、数字が小さいほど症状が重たく、慰謝料も高くなる仕組みです。
後遺障害慰謝料を請求するにあたって、以下のようなステップが重要になります。
- 医師による後遺症診断書を作成
- 自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請
- 認知された等級にもとづいて慰謝料を請求
後遺障害は今後得られたはずの収入(逸失利益)も別途請求できるため、トータルの賠償金額は大きくなる可能性があります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者が交通事故で死亡した場合に、本人および遺族が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料は、事故で命を失ったことに対する損失と、それに伴う遺族の悲しみに対する賠償です。金額は被害者の立場や扶養状況によって大きく変わります。
また、あわせて請求できる費用として以下も挙げられます。
- ・葬儀費用
- ・逸失利益
死亡事故では賠償額が高額になる一方、保険会社からの提示額が不当に低いケースもあるため、交渉の専門知識が必要です。
ご遺族にとって精神的にも大きな負担となるため、早い段階で弁護士のサポートを受けることが重要となります。
交通事故の慰謝料の基準
交通事故の慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があり、どの基準で算出されるかによって受け取れる金額が大きく異なります。
ここでは、それぞれの基準について解説します。
自賠責基準
自賠責基準は国が定める最低限の補償で、もっとも低額となる慰謝料の計算基準です。
この基準は自動車損害賠償保障法に基づいて定められており、強制保険として最低限の対人賠償を保障する目的で運用されています。この基準で算出される慰謝料は、同じケガや被害であっても、他の基準より低くなるのが一般的です。
以下の表は、自賠責基準による慰謝料例です。
種類 | 慰謝料額 |
---|---|
入通院慰謝料 | 4,300円×日数 |
後遺障害慰謝料 | 110万円~1,100万円 |
死亡慰謝料 | 本人400万円+遺族550万円~750万円 |
被害者救済のための基礎金額とされているため、示談や訴訟では自賠責基準より高額な基準が用いられます。
任意保険基準
任意保険基準は保険会社ごとに設定される基準で、自賠責基準よりやや高いものの、その金額は非公開で弁護士基準より低いのが一般的です。
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定しているため、詳細な算定方法は公開されていません。しかし、一般的には自賠責基準と同等か、多少上乗せされた程度の額となります。
例えば、入通院慰謝料では保険会社ごとに早見表が用意されており、期間や日数、症状によって一律的に金額が決まります。
以下の表は、任意保険基準による慰謝料例です。
種類 | 慰謝料額 |
---|---|
入通院慰謝料 | 5,000円~7,000円×日数 |
後遺障害慰謝料 | 130万円~1,200万円 |
死亡慰謝料 | 500万円~1,400万円 |
提示額をそのまま受け入れると、弁護士基準に比べて大幅に低い金額になる可能性もあるため注意が必要です。
弁護士基準
弁護士基準は、過去の裁判例をもとに算出される公平な基準であり、慰謝料を求める際はこの基準での請求がおすすめです。
弁護士基準は、裁判で認められた判例を根拠としているため、他の基準に比べて各段に高い金額が認められます。
以下の表は、弁護士基準による慰謝料例です。
種類 | 慰謝料額 |
---|---|
入通院慰謝料 | 28万円~116万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円~2,800万円 |
死亡慰謝料 | 2,000万円~2,800万円 |
保険会社との交渉段階では、この基準に基づいて請求することで大幅な増額が期待できます。弁護士基準を適用するには、弁護士のサポートが必須となるため、納得できる補償を得たい場合は早期に相談することがおすすめです。
交通事故の慰謝料を請求する際のポイント
交通事故で適正な慰謝料を受け取るためには、保険会社から提示された金額に安易に応じず、根拠や相場をしっかり把握して治療や交渉を続けることが大切です。
ここでは、交通事故の慰謝料を請求する際のポイントを解説します。
保険会社の提示を鵜呑みにしない
保険会社が最初に提示する慰謝料は、適正額に比べて低いことが多いため、そのまま受け入れないように注意が必要です。
保険会社は、一般的に自賠責基準や任意保険基準など低い基準で慰謝料を算出してきます。特に自賠責基準は最低限の補償に留まるため、弁護士基準に比べて数十万円から数百万円という大きな差が生じることも少なくありません。
そのため、提示額にすぐ応じてしまうと、後悔する可能性もあるため、内容を見極めて必要に応じて増額交渉が必要です。
慰謝料の適切な金額を把握する
被害の状況や基準ごとの相場をしっかり確認し、自身のケースに適切な慰謝料を把握することが大切です。
慰謝料の金額は、基準やけがの程度、入通院期間、後遺障害の有無などによって大きく異なります。また、等級や家族構成によっても差が出るため、相場を正しく理解し、根拠を持って交渉することが重要です。
適切な慰謝料を受け取るためには、慰謝料計算機などのシミュレーションツールを活用したり過去の判例や相場表を参照したりして、根拠を持って交渉する必要があります。
治療にしっかりと専念する
治療に専念して通院や入院を適切に続けることが、適正な医療費算出のために不可欠です。
治療の継続が慰謝料額を左右するため、軽傷でも必ず医師の診断を受け、必要な検査や治療をしっかり受けましょう。交通事故後に受診が遅れてしまうと、事故との因果関係が疑われてしまい、慰謝料や治療費の支払いを拒否されるリスクが高まります。
また、診断書や医療記録は慰謝料請求時の重要な証拠となるため、大切に保管しておきましょう。
整骨院や接骨院のみでは証明にならない場合もあるため、医療機関で治療を受けることも重要です。
弁護士に相談する
慰謝料を適切に増額し、満額を受け取るためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士に依頼することで、弁護士基準と呼ばれるもっとも高い基準での慰謝料請求が可能となります。弁護士は交通事故の状況や証拠を確認し、保険会社と直接交渉や訴訟まで代行してくれます。
その結果、保険会社の提示額よりも2〜3倍に増額できるケースも珍しくありません。また、書類作成や後遺障害等の認定手続きもプロがサポートしてくれるため安心です。
まとめ
交通事故の慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる大切な補償ですが、その金額や計算方法はケースごとに大きく異なります。
保険会社から提示される金額は必ずしも適正とは限らず、十分な知識を持たずに示談を進めると、相場よりも低い慰謝料しか受け取れないリスクがあります。正しい慰謝料を受け取るには、事前に相場や計算方法をよく把握しておくことが大切です。
弁護士基準で算出・請求することによって、慰謝料が大幅に増額されるケースも多いため、弁護士への相談がおすすめです。
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