
相続放棄を検討しているものの、誰に依頼すべきか迷っていませんか。
相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きを完了させる必要があるため、迅速かつ正確な対応が求められます。
しかし、司法書士と弁護士、どちらの専門家に依頼すればよいのか分からず、手続きの進め方や費用にも不安を感じているかもしれません。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所への申述が必要です。必要書類の準備や法的な要件の確認など、専門知識が求められる場面が多くあります。
自力で手続きを進めようとすると、書類の不備や提出期限の徒過などリスクが伴い、認められない可能性も考えられるため注意が必要です。
この記事では、相続放棄の依頼先として司法書士と弁護士、それぞれの対応可能な業務範囲や費用の違いを詳しく解説します。
相続放棄は司法書士と弁護士どっちに依頼すべき?
相続放棄の手続きは、故人の借金などの負債を相続しないために欠かせません。
司法書士と弁護士ともに相続放棄に関する業務を扱いますが、対応範囲や費用には違いがあります。したがって、状況に応じて最適な専門家を選ぶには、それぞれの特徴を理解しなければいけません。
ここでは、両者の対応可能な業務と依頼費用の違いを詳しく解説します。
対応可能な業務の違い
司法書士と弁護士は、それぞれ対応可能な業務範囲が異なります。
司法書士は、家庭裁判所へ提出する書類の作成代理(申述書などの書面作成)を依頼者の代わりに行います。しかし、依頼者の代理人として家庭裁判所に出廷したり、相続人との間で生じた負債に関する交渉を行うことはできません。
一方、弁護士は書類作成の代理だけでなく、依頼者の代理人として家庭裁判所での手続き全般(調停や審判)への対応もできます。さらに、相続放棄を巡って債権者や他の相続人との間で争いが生じた場合、代理人として交渉や訴訟を行う権限も持つのが特徴です。
例えば、相続財産に借金が含まれており、債権者からの督促が来ている状況、他の相続人との間で負債の負担について意見の対立があるケースでは、弁護士に依頼する方が一貫した法的サポートを受けられるでしょう。
司法書士はあくまで書類作成の専門家であり、代理交渉や訴訟代理はできません。
依頼費用の違い
相続放棄の依頼費用は、司法書士と弁護士とで傾向が異なります。
司法書士に相続放棄の手続きを依頼する場合、弁護士と比べると費用が安い傾向です。これは、司法書士の業務が書類作成の代理に限定されており、紛争性のないシンプルな案件が多いためです。
費用の内訳は、書類作成費用や実費がメインとなるでしょう。
弁護士に相続放棄の手続きを依頼する場合は、司法書士よりも費用が高くなる傾向があります。書類作成に加え、依頼者の代理人として債権者や他の相続人との交渉、さらには裁判手続きまで幅広く対応できるため、報酬が高めに設定されやすいです。
費用の内訳は、相談料や着手金、成功報酬、実費などが含まれる場合があります。
複雑なケースや紛争性がある案件では、費用は高くなるものの弁護士に依頼すると、トラブルの解決に向けて総合的なサポートを受けられます。
司法書士と弁護士どっちに依頼すべきか決めるポイント
司法書士と弁護士どっちに依頼すべきかは、以下のポイントを押さえて検討しましょう。
- ・シンプルな内容の相続放棄で費用を抑えたい場合は司法書士
- ・家庭裁判所での手続きを自分で行えるなら司法書士
- ・借金などの問題がある場合は弁護士
- ・3ヶ月の期限が近い場合は弁護士
- ・煩雑な手続きを丸投げしたいなら弁護士
ここでは、司法書士と弁護士、どちらに依頼すべきかを決めるポイントを詳しく解説します。
シンプルな内容の相続放棄で費用を抑えたい場合は司法書士
相続財産のなかに借金や負債以外の問題がなく、他の相続人や債権者との間で争いが発生する可能性が低いケースなら、司法書士への依頼が適しています。
司法書士は、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書の作成代理が主な業務となるため、弁護士に比べて費用を安価に抑えられる傾向です。
書類作成のプロである司法書士に依頼すれば、申述書の不備による却下のリスクを減らし、費用を抑えつつ確実に手続きを進められます。
自身で家庭裁判所とのやり取りや債権者への対応を行う意思がある場合にも、司法書士は有効な選択肢となるでしょう。
家庭裁判所での手続きを自分で行えるなら司法書士
相続放棄の手続きで、家庭裁判所とのやり取りや必要書類の提出などを自身で積極的に行える場合は、司法書士に書類作成のみを依頼する選択肢があります。
司法書士は、相続放棄申述書の作成や添付書類の収集に関するアドバイスは提供できますが、家庭裁判所への書類提出や裁判官との面談、追加書類の提出指示への対応など、家庭裁判所での手続きの代理はできません。
自身で家庭裁判所とのやり取りを行えば、弁護士に依頼するよりも費用を抑えられます。
ただし、手続きに不安がある、多忙で時間が取れない場合は、弁護士を検討したほうが安心できるでしょう。
借金などの問題がある場合は弁護士
故人の相続財産に多額の借金が含まれている、債権者からの督促がすでに始まっている、あるいは他の相続人との間で負債の負担で意見の対立が予想される場合は、弁護士への依頼が最適です。
弁護士は相続放棄申述書の作成代理をはじめ、依頼者の代理人として債権者との交渉、家庭裁判所での調停・審判手続きに対応できます。
特に、相続開始から3ヶ月の熟慮期間を過ぎた場合などの相続放棄申述受理申立ても、弁護士の専門知識が必要となるでしょう。
負債問題の解決に向けて法的サポートが欠かせない場合は、弁護士が適しています。
3ヶ月の期限が近い場合は弁護士
相続放棄は、故人の死亡を知った日から3ヶ月以内という熟慮期間が設けられています。
期間が迫っているにもかかわらず、手続きがまったく進んでいない、または財産状況の調査が間に合わない切迫した状況にある場合は、迅速な対応が可能な弁護士に依頼するべきです。
弁護士は、書類の準備から家庭裁判所への申述までの一連の手続きを速やかに進められるほか、熟慮期間の延長申立てを行えます。
一方、司法書士への依頼では、書類作成後の裁判所とのやり取りは自身で行わなければいけません。そのため、時間的制約が厳しい状況では、包括的にサポートしてくれる弁護士への依頼が適しています。
煩雑な手続きを丸投げしたいなら弁護士
相続放棄の手続きは、多岐にわたる煩雑な作業を伴います。
- ・必要書類の収集
- ・申述書の作成
- ・家庭裁判所への提出
- ・裁判所からの照会への対応
これらの手続きを行う時間がない、あるいは精神的な負担を最小限に抑えたいと考えるのなら、弁護士に手続きを丸投げするべきです。
弁護士は書類作成だけでなく、債権者や他の相続人との交渉、家庭裁判所とのやり取りなど、相続放棄に関する業務を依頼者の代理として行ってくれます。
相続放棄の弁護士費用を抑える方法
相続放棄の弁護士費用を抑える主な方法は、以下の4つです。
- ・無料相談の活用
- ・複数の弁護士事務所で見積もりを取る
- ・複数の相続人がいる場合は同時に依頼
- ・法テラスの利用
ここでは、相続放棄の弁護士費用を抑える方法を詳しく解説します。
無料相談の活用
弁護士事務所のなかには、初回相談を無料で提供している場合があります。
無料相談を積極的に活用すると、費用を抑えつつ、専門的なアドバイスを受けられます。複数の事務所の無料相談を利用し、自身の状況を説明すれば、それぞれの費用体系や対応方針を比較検討できるでしょう。
また、無料相談を通じて弁護士との相性も確認できため、安心して依頼したい方には最適です。無駄な出費を抑えながら、最適な専門家を選べます。
複数の弁護士事務所で見積もりを取る
相続放棄の費用は、弁護士事務所によって異なる場合があります。
そのため、依頼を検討している複数の事務所から、具体的な見積もりを取りましょう。
見積もりを比較すると、各事務所の費用体系やサービス内容が適正かどうかを判断できます。
弁護士事務所に見積もりを依頼する時は、相続放棄に関する状況を具体的に伝え、発生しうる費用項目を明確にしてもらうのがポイントです。
複数の相続人がいる場合は同時に依頼
故人の相続人が複数おり、全員が相続放棄を検討している場合は、複数の相続人が同じ弁護士に依頼すると、費用を抑えられる可能性があります。
事務所によっては、複数の依頼者が同時に手続きを依頼すると、1人当たりの費用を割引する複数人割引を設定しているケースも珍しくありません。これは弁護士側にとっても手続きの効率化につながり、依頼者側の費用負担が軽減されるためです。
事前に他の相続人と相談し、共同での依頼を検討してみましょう。
法テラスの利用
経済的な理由で弁護士費用を支払うことが難しい場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度の利用を検討しましょう。
法テラスは経済的に余裕がない方が法的トラブルを解決できるよう、弁護士費用の立替などを行っています。
相続放棄の手続きも制度の対象となる場合があるため、相談してみるべきです。
利用には一定の資力要件がありますが、審査に通れば、弁護士費用を分割払いにできたり、大幅に減額されたりする可能性があります。
相続放棄の費用に関するよくある質問
ここでは、相続放棄の費用に関するよくある質問に回答します。
Q.司法書士と弁護士どちらが安いですか?
A.相続放棄の手続き費用は、司法書士に依頼する方が弁護士に依頼するよりも安くなる傾向があります。
これは司法書士の業務範囲が、家庭裁判所への提出書類作成代理に限定されており、紛争性がないシンプルな案件を多く扱うためです。
弁護士は書類作成だけでなく、債権者との交渉や家庭裁判所での代理業務、複雑な法律問題の解決まで幅広く対応できるため、費用が高くなる傾向があります。
ただし、相続財産に多額の借金があったり、他の相続人との間で問題があったりする場合は、弁護士に依頼するとトラブルの解決に向けて総合的なサポートが受けられます。
そのため、結果として費用対効果が高いとも考えられるでしょう。
依頼を検討する際は費用の安さだけでなく、状況に合ったサポートが受けられるかどうかを判断するべきです。
Q.相続放棄の費用は誰が支払いますか?
A.相続放棄の弁護士費用や司法書士費用は、原則として相続放棄を申述する依頼者本人が支払います。
相続放棄は、故人の財産や負債を一切引き継がないという個人の意思に基づく手続きです。したがって、手続きにかかる費用は、意思表明をする本人が負担します。
複数の相続人が同時に相続放棄の手続きを進める場合も、それぞれが依頼者として、各自の費用を支払う流れです。
ただし、複数の相続人が同じ弁護士や司法書士に依頼し、費用を分担すれば、1人当たりの費用負担を軽減できるケースがあります。
費用分担については、事前に他の相続人としっかり話し合いましょう。
Q.司法書士や弁護士に依頼した際の費用はいつ支払いますか?
A.司法書士や弁護士に相続放棄の手続きを依頼した場合の費用は、事務所によって支払いタイミングが異なります。
しかし、依頼契約時に着手金として一部を支払い、手続き完了後に成功報酬として残金を支払う形が一般的です。
費用の支払い時期や支払い方法については、依頼契約を締結する前に事務所に確認しておきましょう。
まとめ
相続放棄を依頼する際の司法書士と弁護士の違いは、対応可能な業務範囲にあります。
司法書士は書類作成の代理がメインで、家庭裁判所での代理業務や債権者・他の相続人との紛争解決はできません。一方、弁護士は書類作成に加え、さまざまな交渉や裁判手続きの代理も可能です。
相続財産がシンプルで紛争性が低い場合は司法書士、多額の借金や複雑な問題がある、または手続きを完全に任せたい場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。
特に、3ヶ月の熟慮期間が迫っている場合は、迅速な対応が可能な弁護士への相談を推奨します。
徳島県鳴門市の泉法律事務所では、相続放棄に関する豊富な知識と経験を持つ弁護士が、ご依頼者様の状況を丁寧にヒアリングし、もっとも適切な手続き方法をご提案いたします。
家庭裁判所への申述書の作成から債権者への対応、他の相続人との間の複雑な問題解決まで、ご依頼者様の負担を最小限に抑えながら、相続放棄の手続きを確実にサポートいたします。
負債の相続でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。