
相続放棄を弁護士に依頼すると、的確なアドバイスを受けながら期限内に手続きを進められ、相続人トラブルの回避にもつながります。
弁護士は法律の専門家として要件や手続きを正確に把握しているため、依頼者の状況に合わせて最適な解決策を提案できます。
特に相続放棄は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があるため、迅速かつ正確な手続きが必須です。だからこそ、弁護士に依頼する必要性はきわめて高いといえます。
この記事では、相続放棄を弁護士に依頼する5つのメリットや費用相場、選び方のポイントを詳しく解説します。
相続放棄を弁護士に依頼するメリット
相続放棄は、故人の借金などの負債を引き継がないための手続きです。
法的な要件や複雑な状況が絡む場合が多く、自身で対応するにはさまざまなリスクが伴います。
そこで弁護士に依頼すればリスクを回避し、確実に手続きを進める以下のメリットが得られます。
- ・状況に合った的確なアドバイスをもらえる
- ・期限内に手続きを進めてもらえる
- ・相続人同士のトラブルを回避できる
- ・債権者への対応が可能
- ・3ヶ月の期間を過ぎていても手続きできるケースがある
ここでは、相続放棄を弁護士に依頼する5つのメリットを詳しく解説します。
状況に合った的確なアドバイスをもらえる
相続放棄を弁護士に依頼するメリットは、自身の状況に合わせて、弁護士から的確なアドバイスをもらえる点です。
相続放棄は書類を作成して提出するだけでなく、相続財産の調査、相続人関係の確認、熟慮期間の起算点など、個々のケースでは判断が難しい要素が多々あります。
例えば、故人の財産状況が不明確な場合や相続人が多数いる場合などの判断に迷う状況でも、弁護士がいればスムーズに対応してもらえます。
専門知識と経験に基づき、法的な観点から最適な手続き、相続放棄以外の選択肢(限定承認など)について詳しく説明してくれるでしょう。
期限内に手続きを進めてもらえる
相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述しなければいけません。
期間を過ぎると、相続放棄は認められず、故人の負債も引き継ぐことになります。
弁護士に依頼すれば、厳格な期限を遵守されるだけでなく、迅速かつ正確に手続きを進めてもらえます。必要書類の収集や申述書の作成、家庭裁判所への提出、裁判所からの照会への対応まで、一連の手続きを滞りなく進めてくれるでしょう。
対応する時間がない・手続きに不慣れな場合も、弁護士に一任すると期限徒過のリスクを回避し、確実に相続放棄を完了できます。
相続人同士のトラブルを回避できる
故人に借金がある場合、相続放棄の手続きは、他の相続人に負債が順次移る可能性があります。
このため、相続放棄を巡って相続人同士で意見の対立や、トラブルに発展するリスクが高まるでしょう。
しかし、弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として、他の相続人に対し相続放棄の意思表示や手続きの状況を適切に伝えられます。
また、相続に関する法的な知識に基づいて、他の相続人からの誤解や不満を解消するよう努め、冷静な話し合いを促すことも可能です。
これにより、感情的な対立が避けられ、相続人同士の関係性を損なわず、円滑に手続きを進められます。
債権者への対応が可能
故人に借金があると相続放棄を検討している間でも、債権者からの督促や連絡が頻繁に来る場合があります。
自身でこれらの対応を行うことは、精神的な負担が大きいだけでなく、不用意な言動によって相続を承認したとみなされてしまうリスクも伴うでしょう。
一方、弁護士に相続放棄を依頼すれば、債権者からの連絡はすべて弁護士が窓口となって対応してくれます。
債権者に対し、相続放棄の手続き中であることを通知し、直接の連絡を停止するよう求めます。これにより、依頼者は債権者からのプレッシャーから解放され、安心して手続きの完了を待てるでしょう。
3ヶ月の期間を過ぎていても手続きできるケースがある
相続放棄の熟慮期間は原則3ヶ月ですが、状況によっては期間を過ぎても認められるケースがあります。
例えば、故人に借金があることを知らなかった、借金の存在を知ったのが最近など、特別な事情がある場合です。
このような場合、自身で手続きを進めるのは困難です。しかし、弁護士に依頼すれば、期間の起算点に関する法的な解釈や、特別な事情を家庭裁判所に説明するための申立書を作成してくれます。
過去の判例や解釈を踏まえ、具体的な証拠を揃えて申立てを行えば、期間経過後の相続放棄が受理される可能性を高められるでしょう。
弁護士に相続放棄を依頼した際の費用相場
相続放棄を弁護士に依頼する際の費用は、事務所や個別の事情によって変動します。
主な内訳は、以下の通りです。
- ・相談料
- ・着手金
- ・成功報酬
- ・実費
相場は、1人あたり5万円~10万円程度の着手金を設定している事務所が多い傾向です。
費用には必要書類の収集に関するアドバイスをはじめ、家庭裁判所への申述書の作成、裁判所からの照会への対応などが含まれます。
ただし、以下のような事案が複雑な場合は、費用が加算される可能性があります。
- ・故人の財産調査が困難
- ・相続人が多数いて複雑な関係性がある
- ・債権者との交渉が必要な
- ・熟慮期間を過ぎてしまった後の申立てを行う
これらのケースでは、通常の費用に加えて別途費用が発生する可能性が高くなるでしょう。
弁護士事務所によっては、初回相談無料や着手金と報酬を合わせたパック料金を設定している場合もあります。
依頼を検討する際は複数の事務所から見積もりを取り、費用の内訳や追加費用の有無を確認しておくべきです。
相続放棄を依頼する弁護士選びのポイント
相続放棄を依頼する弁護士選びのポイントは、以下の通りです。
- ・遺産相続に関する実績が多い
- ・税理士や司法書士との連携が強い
- ・依頼者のデメリットになる内容も説明してくれる
- ・費用を公開している
- ・相談のしやすさ
ここでは、相続放棄を依頼する弁護士選びのポイントを詳しく解説します。
遺産相続に関する実績が多い
遺産相続に関する実績が豊富にある弁護士を選ぶと、手続きが成功しやすくなるでしょう。
遺産相続は法律だけでなく、家族関係や感情的な側面が絡む複雑な分野です。実績の多い弁護士はさまざまなケースに対応した経験があるため、状況に合わせた的確なアドバイスや、予期せぬ問題が発生した場合にも適切な対応が可能です。
弁護士のWebサイトで過去の取り扱い事例や相続に関する専門性を確認し、実績が豊富か判断してください。
税理士や司法書士との連携が強い
相続放棄の手続きには、税務や不動産登記など、他の専門分野が関わる場合があります。
例えば、相続財産に不動産が含まれている、相続税に関する検討が必要な場合などです。
そのため、税理士や司法書士など、他の専門家と強固な連携体制を持っている弁護士を選ぶのが望ましいでしょう。
これにより、自身が複数の専門家を個別に探す手間が省け、ワンストップでスムーズな対応を受けられる可能性が高まります。連携が強い事務所なら、相続に関するさまざまな視点から最適な解決策を提案してくれるでしょう。
依頼者のデメリットになる内容も説明してくれる
信頼できる弁護士は、依頼者にとってのメリットだけでなく、相続放棄を選択した場合に生じるデメリットも丁寧に説明してくれます。
例えば、相続放棄をすると故人のすべての財産(プラスの財産も負債も)を相続できなくなることや、次の順位の相続人に負債が移る可能性などです。
相続放棄はこれらを事前に理解し、納得したうえで決断しなければいけません。
メリットばかりを強調し、デメリットを説明しない弁護士は避けるべきです。誠実な説明をしてくれる弁護士は、依頼者の立場になって親身に考えてくれる可能性があります。
費用を公開している
弁護士費用は事務所によって異なりますが、料金体系をWebサイトなどで公開しているところを選びましょう。
費用が不透明な事務所では、後から予期せぬ追加費用が発生したり、費用に関するトラブルに発展したりする可能性があります。費用の内訳(相談料、着手金、成功報酬、実費など)が明記されており、見積もりを明確に提示してくれる事務所なら、安心して依頼を検討できるでしょう。
各事務所の費用を比較する際も、透明性が高いところは信頼できます。
相談のしやすさ
弁護士との相談のしやすさも、弁護士選びでは欠かせないポイントです。
相続放棄は精神的に負担が大きい手続きのため、弁護士に対して気軽に質問や相談ができる関係性が望ましいです。
弁護士の話し方や態度、説明の分かりやすさ、レスポンスの速さなどに注目しましょう。
また、事務所の立地や営業時間、オンライン相談の可否など、都合に合わせて相談できる環境が整っているかどうかも確認するべきポイントです。
相性が良く信頼して話せる弁護士なら、ストレスなく手続きを進められるでしょう。
相続放棄を弁護士に依頼する前に知っておきたい基礎知識
相続放棄を弁護士に依頼する前に、以下の知識は把握しておきましょう。
- ・相続を知った時点から3ヶ月以内の手続きが必要
- ・相続放棄するとすべての財産を相続できない
- ・一部の財産を相続したい場合は限定承認を検討すべき
- ・相続放棄の取り消しはできない
- ・被相続人に借金があった場合は他の相続人への負担が増える
ここでは、相続放棄の基礎知識を詳しく解説します。
相続を知った時点から3ヶ月以内の手続きが必要
相続放棄は、自身が相続人になったことと相続財産(特に借金などの負債)があることを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出しなければいけません。
熟慮期間と呼ばれ、相続人が相続するか放棄するかを考えるための期間です。
期間内に何も手続きをしないと、原則として単純承認(すべての財産と負債を相続すること)したとみなされてしまいます。
また期間を過ぎると、よほどの事情がない限り、相続放棄は認められません。
相続放棄するとすべての財産を相続できない
相続放棄を選択した場合、故人が残したプラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)も、マイナスの財産(借金、ローンなど)も、すべてを相続する権利を失います。
相続放棄は一部の財産だけを放棄したり、一部の負債だけを免れたりする制度ではありません。
すべての財産に対する相続権を放棄するため、あらためて最善の選択なのか慎重に検討する必要があります。
一部の財産を相続したい場合は限定承認を検討すべき
故人にプラスとマイナスそれぞれの財産があり、プラスの財産の範囲内で負債を清算し、残った財産があればそれを相続したいと考える場合は、限定承認を検討すべきです。
相続放棄がすべての財産を放棄する手続きであるのに対し、限定承認は相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ、故人の負債を弁済できます。
ただし、限定承認も、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければいけません。
相続放棄の取り消しはできない
家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として後から取り消せません。
申述が受理されると効力が確定し、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、事前に故人の財産状況を調査し、相続放棄が最善の選択か慎重に判断しなければいけません。
被相続人に借金があった場合は他の相続人への負担が増える
相続放棄をすると、故人の負債は次の順位の相続人へと順次引き継がれます。
例えば、故人に配偶者と子がいた場合、子が相続放棄をすれば負債は故人の親(直系尊属)に、親もいなければ兄弟姉妹へと移っていくでしょう。
これにより、今まで相続に関わりがなかった親族に、突然借金の負担が生じる可能性があります。
そのため、相続放棄を検討する際は、後の順位の相続人に迷惑をかけないよう事前に連絡を取り、放棄を伝えたり、必要に応じて他の相続人もまとめて手続きを検討したりするべきです。
まとめ
相続放棄は、故人の負債を相続しないための手続きです。
弁護士に依頼すると、状況に合わせた的確なアドバイスを提供してくれるほか、3ヶ月の熟慮期間内に手続きを確実に進めてくれます。また、相続人同士のトラブル回避や債権者への対応を一任できるため、精神的な負担を軽減できるでしょう。
弁護士費用は事案の複雑性によって変動しますが、一般的には5万円~10万円程度(着手金)が相場です。費用面が気になる場合は、無料相談の活用や複数の事務所からの見積もり取得、複数の相続人による同時依頼、そして法テラスの利用などを検討してください。
また、依頼する弁護士を選ぶ際は、遺産相続に関する実績、税理士や司法書士との連携の強さなどのポイントを重視しましょう。
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複雑な状況や期限が迫っている場合でも手続きを確実に完了できるよう、きめ細やかに対応させていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。